火災で半焼の被害を受けたときの保険金はどうなる!? 決まり方と事後の方策を解説!

火災で半焼の被害を受けたときの保険金はどうなる!? 決まり方と事後の方策を解説!

この記事では、火災保険を掛けていた建物が火災によって半焼の被害を受けてしまったときに、どれほどの補償、保険金給付を受けられるのか解説しています。一般的に用いられる「半焼」や「全焼」という言葉との違いや、注意する必要のある点についても説明しています。
この記事が、思いがけず火災被害に遭ってしまった方の参考として役立てば幸いです。

「全焼」「半焼」などの焼損程度の定義

私たちの日常生活でも、「全焼」「半焼」という言葉が使われることがあります。例えばニュースで、「この火災で合わせて4棟が全焼しました」などの表現を聞いたことがあるでしょう。

しかし、火災保険で用いられる「全焼」「半焼」という言葉の意味と一般的に用いられる意味には違いがあります。

そのため、いざ火災が発生してしまった後の保険請求でも、その違いを理解しておいた方がスムーズな手続に役立つでしょう。

一般用語としての定義(消防庁による定義)

全焼

建物の焼き損害額が火災前の評価額の70%以上のもの、またはこれ未満であっても残存部分に補修を加えて再使用できないものをいう。

半焼

建物の焼き損害額が火災前の評価額の20%以上のもので全焼に該当しないものをいう。

部分焼

建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の20%未満のもので「ぼや」に該当しないものをいう。

ぼや

建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の10%未満であり焼損床面積が1平方メートル未満のもの、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の10%未満であり焼損表面積が1平方メートル未満のもの、または収容物のみ焼損したものをいう。

火災保険における定義

火災保険を使って原状回復しようとするときには、保険会社が独自に全焼かどうかを判断します。もっとも、保険会社自身による偏った判断を避けるため、第三者として損害鑑定人による判断が行われます。

全焼

損害鑑定人が次のいずれかを満たすと判断すると、全焼として取り扱われます。

  • 消防署が全焼と判断した場合
  • 延べ床面積の70%以上が損害を受けている場合
  • 原状回復費用が加入している火災保険の保険金額を超える場合
  • 火災損害額が加入している火災保険の保険金額の80%を超える場合

半焼

火災保険においては半焼という概念はありません。保険金を左右する焼損程度の用語に「全焼」以外の言葉は用いられません。同じく部分焼も「ぼや」も火災保険においては用いられません。

「半焼」の場合に受けられる補償

保険会社から「全焼」として扱われる「半焼」

火災により建物が全焼してしまった場合には、加入している火災保険から契約で設定している保険金額の全額が支払われます。

これには、消防庁定義での半焼であったとしても、原状回復費用が加入している火災保険の保険金額を超える場合、および火災損害額が加入している火災保険の保険金額の80%を超える場合が含まれています。

ただし、注意すべきは原状回復費用です。原状回復とは「元どおりにする」ことであり、対象となるのは当然ながら保険対象である建物または家財です。したがって、例えば火災の影響で一時的にホテル等に宿泊する必要が生じても、その費用は原状回復費用としての積算に含めることはできません。そのため、全焼扱いに届かせるべく意図的に多額のホテル代を支出することには全く意味がありません。

「全焼」でない場合は火災損害額が補償される

では、火災保険における(保険会社基準の)半焼の場合、どのような補償が受けられるのでしょうか。

繰り返しとなりますが、火災保険には半焼という概念は存在しないのが大前提です。全焼と見なされない場合は、火事以外の原因による保険事故と同様、修繕・修理に必要となる費用、すなわち火災損害額の分の保険金が支払われることになります。

火災損害額とは、焼き損害額と消火損害額を足した金額です。

焼き損害とは、火災により焼けてしまった物の損害を指します。例えば、焼けてしまった屋根等の住宅設備、テレビ等の家財、火災によって変色してしまったフローリングや家財等、または火災の高温によって損壊してしまった壁や家財等が含まれます。

消火損害とは、文字どおり消火活動の影響によって生じた損害を指します。例えば、放水によって発生した漏電、壁に空いた穴、水漏れ等が含まれます。

このように、一般的な意味の「半焼」の場合は、全焼扱いとして保険金額が満額給付されるケースと火災損害の実損填補を受けるケースの2つに分かれることになるのです。

火災前(火災直前)の建物評価額に関する注意点

火災保険に加入する際には、保険対象となる建物や家財の評価方法について、火災保険の契約時に「新価」(「再調達価額」とも言う)方式で行うか、「時価」方式で行うかを選択しなければなりません。

新価とは、同等の物を新たに建築または購入するのに必要な金額です。したがって、新価方式の評価に基づいていれば保険金の補償だけでの復旧が十分可能です。

一方で時価とは、新価から経過年数による価値の減少と使用による消耗分を差し引いた現在価値の額を指します。したがって、時価方式による場合の補償では新しく建物を再取得するのは困難となります。

火災保険への再加入と契約の見直し

全焼の場合にせよ半焼の場合にせよ、加入していた火災保険の保険金額の80%を超える保険金給付があった時点で契約が終了します。これは、保険対象である建物または家財が存在しなくなったと見なされるためです。

火災保険の再加入に当たっては、発生した火災によって受けた補償内容も踏まえた上で、例えば保険対象として建物だけでなく家財も含める、保険金額を上げるなど、契約内容の見直しが必要となる場合もあるでしょう。

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